春に華やぐ わが街の注目アート

感性を豊かにしてくれる、芸術との出会い。それが、住む街にゆかりの深い人たちの作品であれば、味わいはなおさら深まります。宝塚と芦屋から、この春注目の展覧会を紹介します。

宝塚をアートの聖地に
現代美術で「春」華やかに発信

宝塚をアートの新しい聖地にしたいとの願いを込めた「オマージュTAKARAZUKA―春 プリマヴェーラ」が、7日(金)~5月7日(日)、宝塚市立文化芸術センターで開かれる。

センターは2020年6月、遊園地や植物園の跡地に開館。市民に親しまれた思い出の場所を新たな憩いの空間にしようと誕生したが、コロナ禍と重なった。そのため今回、開館3周年を機に、長い冬を乗り越えた「花・生命・春」をテーマに記念展を開催する。プリマヴェーラは「春」を意味するイタリア語。全国の若手、中堅、ベテランの幅広い気鋭アーティスト12人が出品し、作品の半数以上がテーマに沿った新作になる。

記念展に向けて準備を進める川口奈々子さん、 柴田知佳子さん、片山みやびさん(写真左から)

柴田知佳子さん(宝塚市)はアクリル絵の具と岩絵の具を併用する技法で、色彩と物質の対比など新たな絵画表現を探っている。「ありのままに生きる喜びと力強さを感じ取ってもらえたら」と期待する。ガラスやアクリル画を手掛ける片山みやびさん(豊中市)は18点組みのインスタレーション(空間芸術)を展示。つるりとした質感と透明感が魅力で、「見晴らしが利くようになった今の気持ち、華やかさを伝えたい」と意欲を見せる。川口奈々子さん(神戸市)は明るい色調ながらどこか奇妙さが感じられる油彩画が得意。庭で少女がたたずむ作品にはスミレやダリアなど宝塚ゆかりの花も交えてあり、「宝塚は街の雰囲気が私のイメージと重なります」と出品の意義を話す。

片山みやび《ここに花ある》2022年、キャンバスにアクリル・油彩、ガラス
©︎2022 Miyabi Katayama
柴田知佳子 《Be–Ⅲ》2022年、顔料・アクリル絵の具、綿布
川口奈々子 《hide and seek》 2022年、油彩・キャンバス
Photo by Yuta Geshi

加藤義夫館長は「歌劇やアニメなど数々の文化を生んだ宝塚らしい夢のあるアートを発信していきたい」と話している。

●宝塚市立文化芸術センター
TEL0797・62・6800
JR・阪急宝塚、阪急宝塚南口から徒歩6~11分。
一般(高校生以上)800円、中学生以下無料。
10~18時(入場は17時30分まで)
水曜休館(5月3日は開館)。

 

芦屋の美術の中心を担った
知る人ぞ知る画家にスポットを

伊藤継郎《二人の司教》1968年 油彩、布 芦屋市立美術博物館蔵

芦屋市立美術博物館は、1991年の開館以来初となる改修工事を終え、15日(土)にリニューアルオープンする。その記念として特別展「芦屋の美術、もうひとつの起点 伊藤継郎」を7月2日(日)まで開催する。

洋画家・伊藤継郎は1907年大阪に生まれ、28年に芦屋に転居。以降、芦屋を拠点に精力的に作品を発表した。同館学芸員の川原百合恵さんは「芦屋の画家の中でも、彼の存在はあまり知られていないかもしれません」と話す。そんな画家にスポットを当てる理由は「芦屋の美術の軌跡をたどる時、同じく芦屋を拠点とした小出楢重や吉原治良といった著名画家と同様、伊藤は間違いなくもうひとつの『起点』になるからです」と言う。

彼の残した作品は、自在な絵の具の使い方が目を引く。「チューブから直接カンバスに搾り出したり、マッチ棒などを使って絵の具を盛り上げたりして独特の『質感』を出しています。図録ではなく、展示室で直接作品を見てほしい画家の典型です」と魅力を伝える。

小出楢重《横たわる裸女A》 1928年 油彩、布 芦屋市立美術博物館蔵

終戦後、戦災を逃れた伊藤のアトリエには小磯良平をはじめ、多くの画家や文化人が集った。本展では彼と交流を持った20人の画家の作品も展示。伊藤を起点に関西の洋画界の様相をたどる構成だ。アトリエで伊藤は一般に向けた絵画教室も開き、市民が絵を学んだ。48年には芦屋市美術協会の結成にも携わるなど、芦屋の美術界にもたらした功績は大きい。そんな伊藤のアトリエ写真は、本展のメインビジュアルに使用されている。「プロアマ問わず、芸術を求める人たちにとっての一種の『サロン』が伊藤のアトリエにあり、文化の裾野がここを起点に広がったことを知ってもらえる特別展になります」と話す。

広報の乾紀子さん(左)と学芸員の川原百合恵さん。特別展ポスターをバックに

リニューアル後は、歴史資料展示室が常設展示室に生まれ変わるほか、美術や歴史の面白さを発見する講座やワークショップ「まなびはくルーム」も3年ぶりに通常開催。同館広報の乾紀子さんは「当館の日常風景が戻ってきそうです」と話している。

●芦屋市立美術博物館
TEL0797・38・5432
阪神芦屋から徒歩15分
一般800円、大高校生600円、中学生以下無料。 10~17時(入場は16時30分まで) 月曜休館。




※上記の情報は掲載時点のものです。料金・電話番号などは変更になっている場合もあります。ご了承願います。
カテゴリ: エンタメ